大阪高等裁判所 昭和62年(行コ)8号 判決 1987年8月27日
控訴人(原告) 西宮市職員労働組合
被控訴人(被告) 西宮市公平委員会
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一申立
(控訴人)
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が控訴人に対し、昭和五九年六月二三日付でした西宮市公平委員会規則第二号の制定処分を取り消す。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
(被控訴人)
主文と同旨
第二主張
次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決四枚目裏二行目の「右処分に対し、」の次に「同年六月二五日及び」を、同三行目の「以下」の次に「同年八月一三日付異議申立を」をそれぞれ加える。
二 同八枚目裏七行目の末尾に続けて次のとおり加える。
「すなわち、控訴人は、本件規則制定行為によつて、看護婦長である組合員九名を失い、同人らに対する組合費の徴収や統制の権限を奪われ、また、看護婦長の労働条件に関する当局との交渉権限、協定権限も奪われることとなるのであつて、右規則制定行為は労働組合である控訴人に具体的な効果を生ぜしめるものとして、処分性を有するものというべきである。」
三 控訴人の当審における主張
控訴人は、本件異議申立をした昭和五九年八月一三日より以前である同年六月二五日にも、本件規則制定処分に対し異議申立をしたが、右申立は、行政不服審査法第四条及び地方公務員法第四九条の二に定める各不服申立の趣旨を含んでいるものと解すべきであり、仮にそうでないとしても、少くとも行政不服審査法第四条に定める不服申立と解すべきである。けだし、右申立書(甲第五号証の一)の記載では、本件規則制定処分に対し不服申立をする趣旨は明らかである以上、少くとも一般法としての性質を有し、一般概括主義をとる行政不服審査法上の不服申立とみるべきだからである。
そして、被控訴人は、右法条による不服申立に対する決定をしていないから、本件訴訟が出訴期間を徒過していて不適法である旨の被控訴人の本案前の主張は失当である。
四 被控訴人の答弁
控訴人がその主張のように昭和五九年六月二五日に異議申立をしたことは認めるが、その余の事実は全て否認し、前項の主張は争う。
第三証拠関係<省略>
理由
一 当裁判所の認定、判断は、次のとおり付加、訂正するほか原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決一一枚目裏一二行目の「いうもので」の次に「、その制定当時における全ての右看護婦長及び右時点以後に右看護婦長となるべき不特定の者を対象とするもので」を加え、同一五枚目表一〇行目の「性資」を「性質」に改める。
2 控訴人の当審における主張について
控訴人が昭和五九年六月二五日に本件規則制定処分に対し異議申立をしたことは当事者間に争いがなく、控訴人は、右申立は行政不服審査法第四条に基づく不服申立(ないしその趣旨を含むもの)と解すべき独立の申立であつて、右申立に対する決定が未だなされていない以上、本件訴訟が出訴期間を徒過したものとはいえない旨主張している。
ところで、右申立に対する決定が未だなされていないことは弁論の全趣旨から明らかであるが、成立に争いのない甲第五号証の一(右申立書)によれば、控訴人名義の右申立書には、本件規則の制定は、労働組合の団結権を侵害するもので、不法、不当であり、これに抗議し、その撤回を求め、異議申立をする旨の記載があることが認められるが、さらにそれ以上の不服申立理由の記載はなく、その後同年八月一三日受付の書面で控訴人から代理人の弁護士三名を介して詳細な不服理由等を明らかにした異議申立が被控訴人に対してなされたことは、成立に争いのない乙第四号証により明らかである。
右申立の経過、各申立書の記載内容、本件異議申立について被控訴人が同申立却下決定をした際には、当初の申立に対応した決定がなされていないことについて、控訴人から特に釈明や異議を申し入れた形跡がないこと及び右申立却下決定後に申立てられた再審請求書においても、右の当初の申立に対応した決定がなされていない点について何らの記載がないこと(成立に争いのない甲第七号証により認定)からみると、控訴人は、同年六月二五日本件規則制定の通知を受けるや即日抗議の趣旨を含めて被控訴人に異議申立をしたうえ、さらに同年八月一三日付でその様式と内容を整理した同様の申立をしたものであるから、両申立は一体のものとみるのが相当であつて、当初の右申立が独立してなされたものと解することはできない。
そうすると、当初の右申立が独立のものであることを前提として、本件訴訟の出訴期間の遵守を主張する控訴人の本項の主張は、その余の点について検討するまでもなく、理由がないものといわなければならない。
3 当審で取調べた各証拠によつても以上の認定判断を左右するに足りない。
二 そうすると、控訴人の本件訴えを却下した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石川恭 大石貢二 松山恒昭)